top of page

親知らず

歯の治療で、患者さんにとって抜歯が一番大変な事だろうと思います。夜も眠れないほど痛み、苦しめられた『恨み重なる歯』ならともかく、さほど痛んでもいない歯を抜くとなるとなおさらです。しかし、痛みがなくても抜いておいたほうが望ましい場合もあるのです。

智歯(第3大臼歯、親知らずのこと)もその一例です。智歯の周りは筋肉の活動が少ない場所で、食べかすがたまりやすく、比較的早期に虫歯になりやすいという事も一つの理由です。また正常に生え出ている場合はなんら問題はありませんが、特に下あごの智歯は多くの場合、前に傾斜して生えたり、完全に横向きになったりしている事が多いのです(あごの発育が不十分で生え出る場所が少ないため)。このことは、さらに食べかすがたまりやすくなり、智歯ばかりか、隣の第2大臼歯まで虫歯になってしまうことが多いのです。また智歯の周りの組織は雑な構造をしており、食べかすのたまりやすい事とあいまって、大変炎症を起こしやすい場所でもあります。「夜痛みはじめ、次の朝には顔の相が変わるほどはれ、口が開きにくくなったり、唾を飲み込むとのどの奥まで痛い」という、広い範囲に炎症が及ぶのはそのためです。智歯周囲炎といい、おおむね20歳前後に、多くの人が経験します。

これらの事を考え合わせて、正常に生えていない智歯は虫歯、智歯周囲炎になるまでに抜歯をしておいた方が望ましいわけです。

bottom of page