歯の豆知識

義  歯

入れ歯の手入れ

①入れ歯はいつも清潔に

入れ歯は天然歯に比べて数倍も汚れやすく、食べカスやタバコのヤニなどのほか、目に見えない菌が付着しています。

この菌はカンジダ菌という真菌(カビの一種)で、義歯に好んで付着増殖します。これが、義歯の汚れ、悪臭の原因となり、義歯性口内炎など、口腔カンジダ症を誘発します。

このような義歯特有の弊害は、その原因であるカンジダ菌を除去することで解消します。

そのためには、洗浄剤や歯ブラシを使って、毎日の手入れが必要です。

②入れ歯をはずしているときは水中に

入れ歯は口の中の条件に合わせて水分に強く作られていますが、乾燥にはどちらかというと弱いほうで、はずしたまま放置しておくと室温や湿度の変化によってゆがみ、変形したりひびが入ったりします。

夜間睡眠中にはずすときは必ず、水の中に入れましょう。

③定期検診を受けましょう

どんなに精密に作られた入れ歯でも、歯ぐきの変化や入れ歯そのものの摩擦によって、少しずつ適合性が損なわれます。

入れ歯に狂いを感じたとき、たとえわずかでも、自己流で削ったり曲げたりすると、入れ歯全体をだめにします。異常を感じたら、歯科医院で点検してください。

入れ歯を使うときの注意

義歯は、歯を失った方が食事をするために入れるほか、●顔形を整える●正しく発音をする●残っている歯や周りの組織を守る、など多くの目的のために必要なものです。一人ひとりの口の中の状態が全く異なるため、歯科医師や技工士が何時間もかけて手作りで仕上げたオーダーメイドの人工臓器です。しかし、ただ飾っているだけでは役に立ちません。十分に機能するには慣れることや調整が必要です。

義歯も異物ですので当初は違和感があります。食事もしにくいし味もよく分りませんが、靴や眼鏡が時間がたてば慣れるように、異物感も1ヶ月ぐらいでなくなるものです。

とはいっても、使ってみて痛いときや噛みにくいとき、また、自分で取り外しができないときなどは、主治医に相談してください。歯科医に遠慮する必要はありません。患者さんの訴えによってうまく調整できることもあります。実際、ほんの少しの調整で、充分に機能する場合も多いのです。

ごくまれに、自分で義歯を削ったりバネを曲げる方がおられますが、これは絶対にしないでください。『餅は餅屋』です、素人療法ではかえって悪くなります。

次に義歯の取り扱いですが外して寝るのが一般的です。寝る前に流水にさらしながら、義歯用ブラシで磨きます。また、義歯用洗浄剤も効果があります。義歯イメージ常に清潔に保つよう心掛けてください。乾燥すると変形してしまうので、水を入れたコップの中に漬けておくのがいいでしょう。まれに義歯を装着して寝た方が良い場合もあるので、主治医に相談してください。
 義歯は、無調整で調子良く使える場合もありますが、1ヶ月くらいは微調整が必要です。患者さんと歯科医の協力によって、いつかは体の一部になるものです。

入れ歯を吸着させる薬

よくテレビなどで宣伝している入れ歯を吸着させる薬は原則的に使う必要はありません。いろんな製品がありますが、基本的にはのりでくっつけるようなものと思ってください。

口の中の粘膜はプラスチックや金属など固い材料で支えられているのが粘膜の健康にも良いのです。長期間ブヨブヨののりを塗って粘膜をブヨブヨ状態にしておくと、粘膜の健康な呼吸を邪魔し、結果的にあごの状態を悪くします。また、ブヨブヨの薬は、ばい菌などの温床になりやすく、清潔面からもよくありません。

口の中はとても複雑で、だ液の出口や神経の感じやすい部分、筋などがいっぱいあります。それだけでも大学の研究室がたくさんの分厚い本を出版するほどです。歯科医師は適当に型をとっているように見えて、それらを十分考えながら入れ歯を作っています。我流ではだ液が出にくくなったり、神経を圧迫したり良い結果にはなりません。もし入れ歯が合わなくなっても、多くの場合は内面にプラスチック材料などで合わせる(リベース)や、かみ合わせの調整で改善します。

ただ、臨時的に使ってもらうのはかまいません。たとえば、今日はカラオケの発表会で入れ歯をしっかりくっつけていたい、とか、近日中に歯医者にいくが、それまで臨時にくっつけておこう、などです。残念ながらまれに、あごの骨がほとんどなくなってる気の毒な方もおられます。そのような場合は、使わざるを得ないでしょう。

インターネットをされる方は「義歯安定剤」で検索してみてください。もっと詳細な情報が得られます。

ガタつく入れ歯

最初作った時はピッタリしていた義歯も、年月がたつと歯茎(歯槽堤)が変化、退縮して合わなくなってくることが多いのです。その原因は加齢によるもののほか、大きな病気をしたり、噛み合わせの悪い義歯を無理して使っていることにもあります。

市販の「入れ歯安定剤」も使って悪いとは言い切れないのですが、製品によってはベタベタした糊のようなものもあり、長期間使用すると義歯床粘膜をブヨブヨの状態にし、歯医者が最も義歯を作るのが困難なフラビーガムという歯槽堤に自分でしてしまうことがあります。

やはり、義歯は健康な歯槽堤粘膜が樹脂や金属とぴったり合っているのが良い状態です。

義歯が合わない原因には、義歯の内面が合っていないこともありますが、噛み合わせが悪く、噛むと義歯を外すような力がかかり、そのためにふだんはぴったりしているが、食事をしたら外れるということも多くあります。

また、義歯が合わないと、やたらに新しい義歯を作ってくれという患者さんが多く見受けられますが、噛み合わせを調整したり、リベースといって義歯の内面をレジンで合わせ直すことで、十分目的を達する場合も多くあります。

その場合、通院も数回で済むでしょう。

義歯には精神的な要素も関係するでしょう。あれだけの大きな異物を口に入れ、人間三大欲求の一つである食欲を満足させねばならないのですから。
 義歯を単なる無歯顎イメージレジン、金属の固まりと考えず、人工臓器と考え、気長に慣らす努力をし、また、何でも歯医者さんに相談するようにしてください。
 最後に、自分の目を、胃を、肝臓をいたわるように、義歯も朝晩きれいに洗ってやってください。そうすれば義歯も長持ちしますし、自分の体の一部として愛情もわいてくるでしょう。