1. 急性中毒
フッ化物の急性中毒については多くの報告がありますが、多くはフッ化物製剤の誤用や大量摂取などとされます。最近20年間、フッ化物の歯科的応用の拡がりにより外国では歯科用薬品に関連しての事故例が多くなっています。しかし、わが国では、フッ化物製剤は先進諸国ほどには普及しておらず、また管理が行き届いているせいか、中毒例は極めて少ないと言えます。とくにわが国では家庭で用いるフッ化物錠剤が無いことが中毒例の少ない原因となっています。
フッ化物による急性中毒は、フッ化物をどのくらいの量飲み込むと起こるのでしょうか。
研究者が自分を被験者とした実験を例外とすると、人での中毒実験は不可能なので、その中毒量はもっぱら過去の過剰摂取による事故例から導き出した「推定値」であり、これを『フッ化物の推定中毒量・PTD(probably
toxic dose)』と言います。
わが国の(財)日本中毒症情報センターは人のフッ化物経口投与中毒量を次のようにまとめています。
中毒量:約5〜10mg/kg、消化器症状は約3〜5mg/kgで生ずる。
欧米諸国でもおおむねこの数値が支持されているようです。
急性中毒の主な症状は腹痛、 嘔吐、下痢などであり、進行すると痙攣を起こすことがあります。
一般に急性中毒の処置は毒物の除去と対症療法に分けられますが、毒物の除去が優先されます。その方法は希釈(薄める)、催吐(吐かせる)、胃洗浄(胃の中を洗う)です。経口摂取量が少ない場合はカルシウム含有の飲料(牛乳など)を飲ませて経過を見ることもありますが摂取量が多い場合は入院加療が必要で、嘔吐させ、カルシウム製剤を投与します。
2. 慢性中毒
フッ化物の過量摂取による慢性中毒症としては、「歯牙フッ素症(斑状歯)」と「骨フッ素症(骨硬化症)」が疫学的に確認されています。
・「歯牙フッ素症(斑状歯)」
フッ化物の過剰摂取により、歯に褐色の斑点や染みができる症状を指します。中等度の症例では、エナメル質にいくつかの白い点や小さな孔が生じ、より重症だと、茶色い染みが生じます。歯のフッ素症は、6ヶ月から5歳までの歯の発生期にフッ化物を過剰摂取すると生じます。口腔に萌出した歯には、発生しません。
・「骨フッ素症(骨硬化症)」
比較的高濃度のフッ化物を長期間摂取していると、骨フッ素症が生じえます。例えば、フッ素濃度が8ppmを超える飲料水を20年以上使用している人口集団に、骨フッ素症が見られると言われています。初期の症状は、骨のエックス線不透過性が増加する程度です。さらに過剰摂取が続き、ひどくなると手足の自由がきかなくなり、疼痛、硬直、異常な骨形成等(運動障害性フッ素症)が生じますがめったに見られません。
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